第1章 この気持ち (時透無一郎) *
私が泣いてる間師範はずーっと
私の背中をさすってくれていた。
「東雲…落ち着いたか?」
『はい…師範、すみません、
取り乱してしまって…』
「いや。東雲は今までよく頑張ってきた。
俺の辛い稽古も休まず、嫌な顔もせず、
真面目に取り組んでたのをよく知ってる。
俺にとって東雲、お前は大切な…」
そこで師範の言葉は止まってしまった。
私はそっと師範の顔を覗いてみる。
『師範…?』
「…悪い、東雲。
東雲が弱ってるときにこんなこと言うなんて
卑怯だが言わせて欲しい。」
『……?』
「東雲、俺はお前が好きだ。」
『えっ…』
私はびっくりしすぎて言葉が出ない。
師範が私を好き?え?あの師範が?
そして師範が言葉を続ける。
「東雲のことが放っておけない。
守りたいんだ。
時透のことも全て受け入れる。
まだ男として見てくれなくても構わない。
お前の隣にいさせてくれないか…?」
そっと私の頬に手を添える師範。
その手は凄く温かい。
あぁ、きっとこの人なら私のことを
幸せにしてくれる。大切にしてくれる。
私は師範の手に触れた。
『師範…ありがとうございます。
凄く嬉しいです…』
私は声を震わせながら話し始めた。