第29章 それが選んだ答え(extra2終)
「流石に、奴らがいきなり誘拐するとは思わなかったよ。3人で町を見てまわる中で、接触を図る際に拐うことは考慮していたが」
確認次第即誘拐ってなんだよ……ジャミルが嘆息する。
「正直、ジャミルは私を利用すること、そんなに気にしないと思ってた」
まさか、あんな顔で自分のことを「最低」って言うなんて。
そんなジャミル、知らなかった。
「気にするぞ」
ジャミルがムッとする。
「あ、違うの。ごめん。冷たいとか、そういうんじゃなくてね……」
冷たい人なんて思ったことがない。むしろ逆だ。
それでも、
「割り切れてると思ったの」
ジャミルは願いや目的のために、何かをやると決めたら、やり遂げる人だ。
そのためなら自分が損することでもやる徹底さを持ち、時に人を傷つけることもあると理解していて、
ーーそうなるとわかった上で、やり遂げる人だ。
そう思ったから。
「俺も割り切れると思ってた。だが実際は、アーヤのこととなると、ひどく気持ちが揺れた。こればかりは予想外で、混乱したんだ」
思わずジャミルの目を覗き込もうとするが、逸らされる。
「でも、俺はこれからも必要ならばアーヤを利用するだろう……。幻滅したか?」
「しないわ」
即答する。
「今回みたいに、長期間直接会えないことなんて、そうないわ。だから今度は先に教えてよ。そうしたら、『協力者』になれるでしょう?」
「当たり前だ。だが内容によって話せないことも多い。わかってるだろう?だから……」
「それなんだけどね、ジャミル。私、成人として雇用契約を更新しました。それで、」
「……?」
「“問題無い”その先、その中に関わることが増える予定なので、よろしく」
「……なんだって?」
「いやぁ、更新忘れてて」
「それは聞いてる。忙しくて遅れてるんだろうと思ってた。そうじゃなくて……」
今までは、まだ子どもだから、学生だから、と深入りしないように扱ってもらっていた。
だが実際のところ、カリムの近くで、ジャミルと一緒に仕事することが多いので、内密の情報にも触れやすい場所にいるのだ。執事としては、私が成人しても仕事を続けるなら、その辺の情報の取り扱いに関する線引きを変えようと思っていたらしい。私は喜んで了承した。
「……それは、大事な一線だぞ?」
「うん。重々わかってるの。あのね、」
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