第29章 それが選んだ答え(extra2終)
「手応えがある、といってもまだまだだし、私の魔力量でどのくらい同時に契約できるのかとか、わからないことが多いんだけど」
実習の片手間にしかできないし。
「でも、とにかくね。そういうわけで、ますます従者としてがんばらせていただきます」
私がやりたいこと、私の選択。初めて話したから、上手くまとまらなかったけれど、少しは、伝わっただろうか。
うつむいていた視線を上にやる。
「……」
「……」
……ああ。
「ばかね」
何年あなたを見てきたと思ってるの。
その無表情、泣きたい顔だって知ってるのよ。
「私こそ、あなたに置いていかれたくなくて必死なのに」
私が彼の頭を抱え寄せるのと、彼に抱き込まれるのは一緒だった。
2人の間の隙間なんてなくなればいいと思った。
ーーそばにいて
ーーそばにいるよ
「ふぅん。さっきは大胆だったのに、今は顔が真っ赤じゃないか」
「だっ、そんな、しょうがないじゃない」
「俺は、さっきのキスのやり直しを求めただけだ。『さっき』やったことだろう?」
「あれは……その………………っ、むりぃ……」
お互いの動きが止まり、しばらくジャミルに無言で見下ろされる。が、突如として彼は何か気付いたように時計を見た。
「市場へ行こう」
「え?」
突然の切り替えに頭がついていかない。
「こんなに時間がもらえる機会なんて、このホリデー中じゃ今日しかない」
「はあ」
「髪飾りを選びにいこう」
「いやいや、そんないきなり」
「昨日アーヤを見たとき、綺麗だと思った」
「いっ」
「今日も可愛い」
「ぅえっ」
「……もう少しマシな声はでないのか」
「……ごめ」
「本当は2人で過ごしたかった」
「……」
「ふっ。その顔を見るに、アーヤも満更でもなさそうで良かったよ」
「……っっ」
わかってるくせに、という言葉はもつれて上手く出なかった。
「改めて俺からちゃんと贈りたい。それを付けるアーヤが見たい。なんなら、服も靴も贈りたい」
「は……!?」
「なあ、いいだろう?」
その低い声に私は弱い。多分ジャミルにはバレている。
「キスはその後ゆっくりでいい」
「っっっ!!」
さっきのお返しとばかりに畳み掛けるジャミルに、最早私は全く対応できないのだった。