第29章 それが選んだ答え(extra2終)
「アーヤ、そういうことなら少し私からのアドバイスを聞いてくれるかな?」
ムルシド様はにっこり笑った。
「全部、ジャミルと話なさい。じゃないと拗ねちゃうよ」
「え、」
「私がジャミルの立場だったら拗ねるだろうな」
ふふふ、とこぼすムルシド様はとっても楽しそうだった。
という話をしたのは昨夜だが、拗ねるどころかドッカーン間近案件ではなかろうか。
ジャミルの様子を見て、やばい、と直感が告げる。
咄嗟に彼の頭を両手で抱え込み、彼の口を自身の口でふさいだ。
彼が唖然として口が少し緩んだところに舌を差し込み、丁寧に歯列をなぞってから舌に舌を絡ませる。彼の力が抜けたところで距離を取った。
「はっ……なに、を」
良かった。呆然としているが、こっちを見てる。
「事のあらましを知りたかっただけなの」
「!」
「今回、これが1番確実な方法だったんでしょう?そこに私を駒として組み込んでもらえたなら、光栄よ!責める気なんてないわ」
「いや、」
「私10年以上アジーム家にいるのよ。多少の危険にも対処できる。ジャミルにとっては、まだ目の離せない後輩の印象が強いかもしれないけれど」
「ま……」
「色々できるのよ。カリムの居場所がわかるだけのあの頃とはもう……」
「いや、ちょっと待て!!」
「へ?」
「なんなんだ、あのキスは!」
「え、そこ?」
「アーヤからあんなキスをしてきたことなんて、今まで1度もなかったじゃないか!なんでこんな時に……」
ぎゅうぎゅうとジャミルが抱きしめてきた。
「いや、ちょっと話を聞いてほしくて」
「話……?そうだ。『事のあらましが知りたかった』?あんな追い詰めるような口ぶりで!?」
「はぐらかされそうだったから、聞き方が問い詰めるようになってしまったのは否めないけど」
「勘弁してくれ。最近考えすぎで、逆にもう何も考えられないんだ」
「なんと、」
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう。
抱きしめる力がますます強くなる。
そろそろ痛い。
「……まともに会うの半年ぶりなんだぞ」
長く息を吐く音が聞こえる。
「話したいことがいくらでもある」
「ごめんなさい。私も、沢山話したい……」
策に巻き込むのではなく
問い詰めるでもなく
多分、会って最初にしなきゃいけなかったのはこれだった。
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