第29章 それが選んだ答え(extra2終)
「実習先は魔法契約研究所になったの」
なぜ?と聞けば、「恥ずかしいから、ジャミルにはもう少ししてから教えるわね」と言われた。
ナイトレイブンカレッジ4年生、驚くほどシアに会わない日々が続いた。
年末は帰ってこないし総合文化祭では顔を見ただけ。スマホでは必要最低限の話しかできない。
待ちに待ったスプリングホリデー。
ああ、やっと会える。
帰省して告げられたのは、新しい使用人の1人が怪しい、ということだった。
そう簡単に怪しい者が使用人になれるわけがない。だが用意周到に紛れ込んでいたらしい。時間をかけて最近カリムの使用人にまで昇格した。当主のご夫人の紹介という、すぐ処分するにははばかられる経緯も持っていた。
ありがたいのは、この問題に夫人は全く関係なかったことか。
近頃、カリムに結婚を申し込もうとする家が増えている。その中には少々過激な動きを見せる家もあった。
使用人はそこの家の者らしい。
問題は証拠がないことだった。早く尻尾を出したところを捕まえて処分したい。
カリムが2週間ほど帰省するこのタイミングで使用人は動いてくる。そこを押さえたい。
ムルシド様はそう告げた。今回の件は主に彼と俺とで情報を共有している。
「ところで、アーヤは卒業したらここを辞めるのだろうか?」
「え?」
「雇用契約の更新がまだなんだ。実習にずいぶんと熱が入っているようだしね。もしかしたら来年以降ここを離れることもあるかと思ってね」
ムルシド様は執事で使用人たちを統括する立場でもある。雇用に関しても彼が担当だ。
「スマホではアジーム家に関する話題ははばかられましたのでわかりません」
アーヤは同僚だが、バイパー家の俺と彼女では立場が違う。彼女が望めば、ここを離れることは比較的簡単なことを忘れていた。
卒業後のことはお互い話していなかった。彼女はどうするつもりだろう。直接会ったときに聞こう。
話したいことはいくらでもある。
さて、さあその使用人をどうするか、というときに状況はトントン拍子に整った。
アーヤが遅れて帰省すると知ったカリムが言う。
「迎えにいこうぜ!」
好機だった。
彼女の帰省を、まわりの使用人には黙ってサプライズにしようと提案すれば当然カリムは乗ってくる。
そして髪飾りにGPSを仕込み、彼女に送った。
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