第29章 それが選んだ答え(extra2終)
熱砂の国、アジーム家の屋敷がある都市の端、小さな家が所狭しと並ぶこの地域に、私の家はある。
今日、私はお休みをいただいている。本当ならルームウェアのまま、お昼までゴロゴロしていたいけれど、そうもいかない。
身支度を整え、家を掃除……小さな家なので簡単だ……、お茶と茶菓子も用意し終わってひと息つこうとしたとき、
ドアをノックする音がした。
「いらっしゃい、ジャミル。ここにジャミルが来るなんて、何年ぶりかしら」
ドアを開けて客人を招き入れる。
「ああ、7歳のとき以来、か?アーヤ、君の両親はどちらに……」
「いないわ。仕事だから」
「そんなはずは……。俺は今日、君の家から呼び出しを受けたはずなんだが」
「ジャミル、まずはそちらへ座って」
困惑しているジャミルをソファに座らせ、お茶の用意をする。
「俺は今朝、ムルシド様からここに行くように言われた。アーヤの家から昨日の誘拐事件についてどうしても説明がほしいと言われたから、と」
コトリ、とお茶の入ったカップをジャミルの前に出す。そして隣に座り、うなずいた。
「その通りよ。でも、説明がほしいと言ったのは、私なの」
「……なぜ?俺は昨日“問題無い”と伝えたはずだが。……まさか!何かあったのか?あの後、何か大きな怪我でも見つかったか?それともカリムが言ってたようなフラッシュバックか?」
あらムルシド様、ジャミルにほとんど説明しなかったのね。
心配そうに、いたわるように肩を撫でる手に、自分の手を重ねて止める。
心配してくれる彼には本当に申し訳ないけれど、これはチャンスだ。
ずっと近くにいたから、あなたのことはよくわかる。少しタイミングがずれれば、すぐにはぐらかされると知っている。
だから
今、切り込む。
「違うわ。“問題無い”けどその先を聞いてもいいとムルシド様に許可はもらった」
部屋に防音魔法をかける。
ジャミルの瞳が揺れる。
「ねえ、正直に教えてね。」
両手をジャミルの頬に添えて、緩く固定する。
そして目を正面から射抜く。
「昨日の事件、ジャミルは初めから全部わかっていたんでしょう?」
「それか、可能性の1つとして、私が誘拐されると思ってた」
「あの誘拐事件、引き金を引いたのは、ジャミル。あなたね?」
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