第28章 それは私の選択肢
その後すぐにカリムと合流し、町の外れにやってきた。
ジャミルはアジーム家に連絡を取っている。
「怖かっただろ?大丈夫か?」
腰をかがめてこちらを覗き込むカリムは、これでもかと眉尻を下げていて、心配されているのがよくわかった。
「大丈夫ですよ」
「あとででも、何かあったら言うんだぞ?」
「はい。……あの、カリムくん。カリムくんは今、恋人はいますか?」
「ん?」
突然の質問に驚いたらしい。なぜか少し考えてから
「いないぜ!」
と言う。
「なるほど……」
「アーヤ」
言葉を続ける前に、ジャミルの声にさえぎられる。
「アジーム家に連絡はついた。もう“問題無い”」
「…………なるほど」
「大丈夫か?本当に痛いところはないか?」
「カリムくん、大丈夫ですよ」
「オレも慣れない頃は、フラッシュバックとかあったんだ。不安なときはいつでも言うんだぞ?」
「はい」
「その辺にしておけ、カリム。そんなに揺さぶって、誤って落ちたらどうする」
あれからすぐ、アジームの屋敷に戻ることになって、今は魔法の絨毯で砂漠の上を飛んでいる。
絨毯に3人は少し狭い。
「それにしても、腹減ったああああ~ぁ」
「もうおやつ時も過ぎましたしね」
「昼食は取れなかったからな」
「ジャミルが作ってくれた揚げ饅頭、今食べたい」
「さすがに絨毯に3人乗っていて、このスピードじゃ危ないだろう。下手に休憩して日が暮れるのも避けたい」
「そっか~」
カリムが何かに気付いて「あれ」と呟く。
「そういや、付けてた髪飾り、失くしちまったのか?」
「ええ、逃げる途中で割れて、落ちてしまいました」
髪飾りは誘拐犯に取られてはいなかった。だが、ビルの階段を上る途中、追手の魔法が当たって壊れてしまった。
「もったいないなあ。可愛かったのに。ジャミルが贈ったものなんだろ?」
「まあ……」
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