第28章 それは私の選択肢
ちょっとポエマーな誘拐犯による説得はまだ続いている。
人違いですっ!!!!!
と叫ばなかった自分を誉めたい。
どうやらこの誘拐犯は、カリムの恋人に確実に別れてもらいたいらしい。
やり方が物騒だ。
半年間1人でいたから、カリムやアジーム家の状況がわからない。いや、スマホで連絡は取っていたが、盗聴やハッキングに備えて話せる内容は限られていた。
迂闊な発言は控えるべきだ。
それに、
やっぱりあのデザイン……
ふう、とため息をつく。
この契約書、一通り読んだが本当にカリムと別れて無関係になれば大丈夫という内容のようだ。
恋人ではないが、私はカリムの従者なので無関係でいられるわけがない。だからサインはできない。
できればユニーク魔法で2人の様子を観たいところだが、ここに魔法士がいた場合、魔法を使おうとするのがバレてしまう。そうなれば穏便には済まない。
予想通りマジカルペンを取られているなら、自分が魔法士であることはバレている。
さて、どうするか。
「おい、さっさとサインしろ!サインしなかったら無事には帰れねえぞ!」
痺れを切らした仲間がやってくる。
その時
ガシャーン!!
倉庫上部の窓が割れる。派手な音と共に飛び込んできたのは、魔法の絨毯に乗ったカリムだ。
カリムがこちらを見る。
「アーヤ!無事か?」
首を縦に振ると、リン、と小さく澄んだ音がした。
「熱砂の憩い、終わらぬ宴。歌え 踊れ!」
力強い声が部屋に響く。
「枯れない恵み(オアシスメイカー)!」
カリムのユニーク魔法で倉庫があっという間に水で満たされていく。
「なんだ!?雨?」
「バカ!ここは室内だぞ」
まわりの男たちが状況を把握するまえに、部屋の半分以上が水で埋まる。
「悪いが、おまえたちの動きを止めさせてもらうぜ!」
絨毯に乗ったカリムが下を見る。
「水位は2mぐらいか?これ以上はやらないから、慌てず浮いてるものに捕まれよ」
水に浸かった男たちは、カリムに抵抗しようとするが、魔法道具は沈み、ある者は自身の魔法石を落とし、何より自身が溺れないようにするので手一杯だ。
少しして誰かが叫んだ。
「おい!あの女はどこにいった!?」
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