第28章 それは私の選択肢
~4年生~
雲ひとつない青い空。時折感じるわずかな砂の気配。
「うーん、気持ちいい。今日はいい日になりそうね」
だって、今日は久しぶりにジャミルとカリムに会えるのだから。
ナイトレイブンカレッジ4年生になった私は学外実習をしている。
ジャミルともカリムともこんなに長く離れたことはここ9年で初めてで、研究施設に来たときは不安だらけだった。
半年近く経った今ではここでの生活を満喫している。
ここで学ぶ貴重な期間を無駄にしたくなくて、ウィンターホリデーは熱砂の国には帰らずここで過ごした。
年が明けて、2月の全国魔法士養成学校総合文化祭では、久しぶりにジャミルとカリムに会えたが、自分の研究発表が終わるとすぐにここへ戻ってきてしまったので、あまり話せていない。
スマホでやり取りはしているが、直接会って話せる今回のスプリングホリデーの帰省がとても楽しみだった。とはいっても研究の都合で、ホリデーをすでに半分ほど消化した今日、帰省することとなった。
部屋の鏡台に向かい、引き出しから櫛とゴムと髪飾りを取り出す。
この髪飾りは、数日前にジャミルから送られてきたものだ。
先に帰省して、市場で見つけたというそれを眺める。
「このデザイン……」
少し意外だと思った。
髪を結って、飾る。ナイトレイブンカレッジ生になってから、ずっとしていなかったこの行為は、この町に来てから再開した。
この町に来た実習生は私だけ。実習先には、自分がれっきとしたナイトレイブンカレッジ生であり女性であると学園が伝えているため、男装の必要はない。
スプリングホリデー半ばに帰省する旨を伝えると、すぐにジャミルから連絡がきた。
「カリムと迎えにいく」
この町は熱砂の国に近い。アジームの屋敷がある都市とは隣だ。……正確には、砂漠を越えた隣、なのだが。
でもカリムは、砂漠を軽々飛び越えられる魔法の絨毯を持っている。一足先に帰省している2人が魔法の絨毯に乗ってここまできて、一緒に町を見てからみんなで熱砂の国へ戻る予定だ。
「正午に噴水」
待ち合わせ時間と場所を再確認して家を出る。
待ち合わせ場所の噴水は、この町の観光スポットの1つだ。
中央にグレートセブンの1人、海の魔女の彫像が立っている。手にはお馴染みの魔法契約書を持っていた。
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