第28章 それは私の選択肢
ナイトレイブンカレッジには、ツイステッドワンダーランド中から生徒が集まってくる。
育った環境も人それぞれ。そのなかで、毒殺未遂と誘拐が実際にある環境にいた人は少ないようだ。
以前、輝石の国出身の生徒はカリムとジャミルに言ったそうだ。
「物騒」
また、薔薇の王国出身のとある生徒はこう言ったらしい。
「怖い。ありえない」
その話を聞いて思った。
同じ制服を着て、同じ場所で勉強する人がそう言うのか。毒殺未遂も誘拐もない世界は、ずいぶんと近くにあるのだな、と。
さて実際のところアジーム家の、中でも当主やその後継者のまわりでは、それは起こり得る。
なんでそんなことする人がいるの?
なんでそんなことされなければいけないの?
カリムの毒殺未遂や誘拐があるたびに、「なんで」と、自分ではどうしようもできないことを考えた。カリムやジャミルが「しょうがないこと」と言っても、考えずにはいられなかった。
でも結局のところ、カリムとジャミルの言う通りなのだ。いつもこの答えにしかたどり着かない。
ーー今、私はそういう世界を生きている。
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