第26章 これがモブ視点
「誰かジャミルを止めてくれー!」
「なにをやっているんだバイパー!」
「トレイン先生……止めないでください」
あれから数日経った。ナイトレイブンカレッジのハロウィーンは悪い意味で大騒ぎだ。
購買部前にもマジカメモンスターが現れ、そして……
「ふっ。そんなにお望みならやってやるよ……派手な花火を、ドッカーンとな!!!」
「こら、バイパーやめなさい」
副寮長が暴走していた。
何やらトレイン先生になだめられている副寮長は貴重だった。みんなが見ているから、弱みにはならないが。
寮長も副寮長の横でなだめている。
さてアーヤはどこだ?
ッダーンッダーン!!!
ッダーンッダーン!!!
音がした。後ろを振り向き、それを理解した瞬間ゾッと背筋が寒くなる。
アーヤだ。
アーヤが笑いながら、捨てられたワッフルに集まってきた虫を足で潰している。
その顔はヒーッヒーッと腹がよじれるほど笑っているのに、彼の足はただ淡々と正確無比に力強く黒いヤツを踏み潰していた。
その光景は恐ろしかった。みんな珍しい副寮長の様子と、マジカメモンスターへの怒りで誰も気付いていないようだが……いやなぜ気付かない!?
正直、暴走した副寮長よりよっぽど気味が悪い!!
僕は熟慮する。
アーヤを観察するのはやめにしよう。
僕は熟慮する。
僕は平穏な日常を過ごすことを至上としている。そのためにいつも熟慮するのだ。
……まあしかし熟慮が飽和して浅慮になった感が否めない。