第25章 祝福をきみへ(extra1終)
~数年後~
学園を卒業してから、ずいぶん経った。熱砂の国に戻ってきた私は、今もカリムの従者である。
「アーヤ、そろそろだろ?」
「ええ、カリムくん」
結局、学生時代に何人かに女だとバレた。そのことで色々あったけれど都度対処したし、そもそも不正入学ではないので卒業できた。
「何見てたんだ?」
「ほら、この前の。ラギーが送ってきた写真ですよ」
ラギーは、意外にも仲良くなれた友人の1人で、今も連絡を取り合っている。さっき、端末で見ていたのは、ラギーから1週間ほど前に送られてきた写真だ。
「いい写真だよなあ!引き伸ばして額縁に入れて飾ろうか!」
「……やめてあげて……」
ラギーとジャミルのツーショット。
きっと夕焼けの草原のどこかだろう。
ジャミルは1人で旅に出ている。
言い出したのはカリムだった。
「それは本当ですか?ジャミルが、ひとり旅をしたいって?」
「この前久しぶりにトレイにあっただろ?その時に聞いたんだ!トレイがスターゲイザーだった時にジャミルが言ってたって」
「トレイ先輩が、人の願い事を他人に話すとは意外です……」
「だいぶ酒が入ってたからなあ。口を滑らしたのかな」
「なるほど」
「だから今年の誕生日プレゼントはこれにしようぜ!」
「え?」
「ジャミルにひとり旅!俺とアーヤからのプレゼントだ!それとも、アーヤはもうプレゼントを用意してたか?」
「いいえ、まだ2ヶ月前なので……。それ、プレゼントできますかね?」
「アーヤとならできるさ!アーヤの協力が必要なんだ」
「わかりました。やりましょう!」
当主に話を通し、バイパー家を説得するのは、カリムがやりきった。カリムは今ではずいぶんと商家の跡取りらしくなっていた。我が儘を通すのではなく、きっちり相手を納得させた。
それからは、私は主に使用人体制の見直しのため大忙しだった。ちなみに全てが決まってから、ひとり旅のことを告げられたジャミルは、特にその旅の期間の長さに驚いていたが、全てはカリムの采配である。
私はジャミルから仕事の引き継ぎを受けた。そこで改めて思い知った彼の要領の良さというか、有能さには、舌を巻くどころか逆ギレしたくなるほどだったけれど、それでも必死にこなし、無事ジャミルを送り出したのである。
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