第24章 それを伝え、それは伝わる
顔を持ち上げ、ジャミルに口付ける。
「……ごめんなさい。考えが足りなかったわ」
顔を離して、落ちてきた髪に指を通してすく。
「行かないわ。ただちょっと、監督生たちか心配になっただけなの」
「問題ない。あの監督生がいるんだ。何とかなる」
「あら、ずいぶん信頼しているのね」
「今年度監督生が関わってきた事件を思えば、自然な考えだ」
ジャミルは監督生に、自身が企てた事件を阻止されたことも、フェアリーガラで協力したこともある。彼が言うなら、きっと大丈夫なのだろう。
フフっと笑って、思いきり甘い声を出した。
「ねえ、キスして」
私からキスしたり、キスを乞うことは少ないので珍しいと思ったんだろう。パチパチと瞬きしてこちらを見ていたが、やがて唇が優しく降ってきた。
「……もっと、キス、したい」
「もっと」
「ねえ、もう一回」
ちゅ、と触れるだけのキスを繰り返しては、甘く乞う。
「今回の騒動、ゴーストの姫はたった一度のキスを待ち望んでいるようだが、それに比べてこちらは贅沢だな」
ふむ、とわざとらしく考える素振りを見せて彼は言う。
「こちらのお姫様は、こういうのはお好みか?」
「は……ふぅんっ、あっ……ん……」
口を塞がれ、舌と舌が絡み合う濃厚なキスに変わる。
「はぁっ……はあ」
頭がぼうっとする中、
「……もっと」
ジャミルが口角を上げるのが見えた。
「仰せのままに」
おまけ
「アーヤの性別がバレるのは最低限がいい。この騒動でバレるなんて論外だ。だが俺は前みたいに遠慮して距離を置く気はない。まわりのヤツらに見られて、俺とアーヤの関係を疑われても気にしない」
淡々と告げるジャミルに、しばし言葉が出なかった。
「……最近そんな気はしてたけど、そうなのね。前にレオナ先輩の言ってたとおりなのね」
「どうでもいいヤツに、男同士のカップルと誤解されようが、それこそどうでもいい。アーヤと一緒にいられる時間が大事だ。近くにいれば、何かあっても俺が守れる」
「っ……話し合い!しましょう!私はまだできるだけ目立たない平穏な生活をするつもりだったの。……気持ちは嬉しいけど……」
彼がオーバーブロットしてから色々あった。多くの変化があったが、どうやら私の学園生活もこの先、大分変わってしまいそうだ。