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【ツイステ】ねえ、そばにいて

第23章 春を待つ


まだ誰も起きていないであろう早朝に、廊下を歩いていく。
ジャミルに指定された、運動着に、コートとマフラーを身に付けて。

魔法石が無くなった初日こそ積雪したスカラビアだが、学園によって最低限の対処がなされ、寮周りの雪は無くなっていた。とはいえ普段よりずっと寒い。

視界が開けると、スカラビア寮の裏庭でジャミルが同じような格好で立っていた。

「ジャミル、こんな時間に呼び出すなんて、どうしたの?」

突然のコール音で飛び起きた。何か緊急事態なのではと思って聞いたら、そんなことはなくて、裏庭に来てほしいということだった。

「アーヤ、一緒に踊ってくれないか?」

意外なほど朗らかな顔で言うので、見惚れてしまった。
気を取り直して聞けば、昨夜イデア先輩と一緒に踊ったことで(打った、とも言っていた。なんのことかよくわからない)、フェアリーガラのファッションショーでのダンスに自信を持てたらしい。

「やっと掴んだこの感覚を本番まで忘れたくないんだ。それで、 アーヤと踊りたくなった」

うん喜んで、とうなずくと彼は頬をほころばせた。
キュンと心がうずく。

「 アーヤはカリムのパートを踊ってほしい。観ていたんだろう?」

その通りで、私は『密かな夢』で2人のダンスの練習を観ていた。それから、昔から2人と一緒にいたので、私もそこそこダンスが得意なのだ。

でも、本当は……。踊る練習なら相手はカリムの方が良かったはずだ。早朝だからカリムに申し訳ないということではないのだろう。
ウィンターホリデー以来、時おり、カリムとジャミルはお互いの距離感を測りかねてぎこちないことがある。
とはいえ、相手に私を選んでくれるのは素直に嬉しかった。

「 アーヤと踊るのは久しぶりだな」

「そうね。……ただ、全部は踊れないわよ?」

「わかってるさ。できるところだけで構わない」

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