第23章 春を待つ
~フェアリーガラ~
学園の魔法石が、『妖精の郷』の女王のティアラに使われ、学園の空調が調整できなくなってしまった。全員留年の事態を避けるため魔法石を奪還するべく、レオナ、ラギー、カリム、ジャミル、そして監督生が『ティアラも目線も独り占め大作戦』の準備をしていた。
カリムから電話があったのはそんなときだった。
私はカリムから頼まれた差し入れの果物を持って、準備の行われるポムフィオーレ寮
のボールルームの扉を開けた。
「アーヤー!来てくれたんだなっ!」
「わわっ」
私に気づいたカリムが、勢いよく走ってきてそのまま抱きつかれた。
「見てくれよこの衣装。これ着て踊るんだぜ!すっごくいいだろ!」
抱きつかれているので、よく見えません……と言う前に突然カリムが離れた。
……いや、ジャミルに引き剥がされていた。
「カリム、とりあえずアーヤが持ってきた差し入れをあっちで配ってきたらどうだ?」
「おう!」
差し出したバスケットを笑顔でサンキューな!と受け取ったカリムは、レオナとラギー、監督生と猫みたいなモンスターのところへ持っていった。
残ったのは、いつもは見ない白を基調とした衣装を着たジャミル。
「……き……き……」
「き?」
「き、……きれいっ……!」
美しいってこういうことを言うのね!!!
「あ、あとっ、り、りぼん結び……」
かわいい!そのボリュームが可愛すぎて、私もキュって結びたい!!
普段と違う美しさに顔を真っ赤にさせて、アワアワしている私を見ていたジャミルは、目を細め口角を上げた。
「リボン?この斜めにかけたこれか。触っていいぞ」
そう言って私にリボンを握らせた。
「ふわぁ……!」
なんと滑らかな手触り。これはすごくいい生地を使っているに違いない。
気を良くしたらしいジャミルは、なあ、と言って一歩距離を縮めてきた。あれ?これではぶつかると思って一歩下がると、彼は更に一歩詰めてくる。なぜ?
「(あのー止まってくれませんか?)」
「(もっと近くで隅々まで見ればいいだろう?)」
「(いや、困ります!"ジャミル君")」
小声で必死に訴えるも、壁際に追い込まれてしまった。
見上げると、綺麗な顔がキスできるくらい至近距離にあってドキドキする。この人、絶対自分の顔の良さを自覚してる。この状況を楽しんでる!
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