第22章 むいしきのおもみ
注:今回特に魔法への独自解釈が甚だしいです
『ジャミル!お仕事終わったよ!これから……』
『アーヤ、悪いな。これからカリムが町に出るから行ってくる』
『……いってらっしゃい』
カリムがうらやましかった。いつでもジャミルを連れていってしまうから。いつでもジャミルと一緒だから。
私のユニーク魔法「密かな夢」は、強い願望から生まれたものだ。ユニーク魔法の発現には色々なパターンがあるし、一概に言えないが、「その人だけの魔法」と言うだけあって、その人の個性がよく現れているように思う。
例えば、ジャミルのユニーク魔法の詠唱「瞳に映るはお前の主」。元々それはジャミル自身の世界だ。瞳に常に映してきたのはカリムという主だった。そしてあの魔法の効果は、あの生活の中でこそ手に入れるに至った力のはず。
私のはすごく単純で、「ジャミルと一緒にいられないのなら、せめてずっと見ていたかった」。
初めてこの魔法が発現したときに見たのも、ジャミルだった。まだ一部をぼんやりとしか見れなかったが。色々検証して、相手の承認があってはっきり見えることがわかり、精度を上げて、広い範囲を観れるようになった。
……最近は詠唱破棄が当たり前で忘れていたけれど。
『重てえヤツ』
『お前……』
さっきのレオナの言葉を思い出す。あの聡い先輩のことだ。私の詠唱を聞いて何となく気づいたのかもしれない。
そう。つまり。
「ふふっ。先輩の言う通り、重いのは私なんだわ」
ジャミルに負けやしないくらい。
カリム君に嫉妬したのは冗談なんかじゃなかったのよ。
このままの私でいくしかないのね。
そう思ったら何かふっ切れたようで体が軽い。私は思わず走り出した。
魔法の発現過程がどうであれ、大事なのは、今、これから、その力を何のために使うのか。
愛する人と、大切な主人を守るためにこれからも使っていける喜びを噛み締めて
「会いに行くわ」
地面を強く蹴った。