第22章 むいしきのおもみ
「はあ~~~~~~~~」
突然レオナがしらけた。
「お前、それ何年前だよ」
「10年近く前になるでしょうか」
それを聞くやレオナは再びため息をついて、半目で睨んだ。
「馬鹿だろ。そんなお前に、大衆向け恋愛小説が参考になるわけねえだろうが」
「え」
「そんな昔の初恋をずっと引っ張るやつなんて、そうそういねえ。それができるやつ自身も相当変わってるヤツだ。それがお前だ。だから一般的恋愛知識とやらは意味が無い」
「重てえヤツ」と吐き捨てたレオナは呆れて興味が失せたらしい。
ここまでそれなりに赤裸々に話した挙げ句、馬鹿にされて終わった。そして私には羞恥心だけか残った。最悪の結果だ。
と、そこにスマホのコール音が響く。
「……はいもしもし。……はい」
アジーム家からだ。ご当主様とその従者殿……それぞれカリムとジャミルの父親だ……が息子に電話したが、2人とも出ない。緊急ではないが、早めに連絡が取りたいので、私から2人に伝えて電話させるように。とのことだ。
話の感じから、大した用件ではなさそうだが、全く人使いが荒い。まあ、それだけ私のユニーク魔法が便利だからだろう。
チラリとレオナの方を見ると、興味なさそうに横になって尻尾を揺らしているが、獣人ゆえにこの内容は聞こえていたはずだ。
なので、こちらはそのまま、やるべきことをやらせていただく。
ユニーク魔法でカリムとジャミルを観る。こういう時は、片目ずつそれぞれの場所を観るのが手っ取り早い。ただし、いつも以上に魔力のコントロールが必要なので、詠唱が必須だった。
あれ?そういえばユニーク魔法といえば……
いけない、余計な考え事は不要だ。目を閉じて、集中する。
「瞳を閉じても そこにいて。視界から消えても 永遠に待ち続けよう」
魔力を瞳に込める。
「密かな夢(エバーモア)」
「……」
カリムはクルーウェル先生のところ、ジャミルはバスケ部だ。ここ植物園から近い方から回るなら、先にクルーウェル先生のところへ行くとしよう。
「レオナ先輩、すみませんが仕事が入りましたので、今日はここで失礼します」
「お前……」
「はい?」
「いや、何でもねえ」
→