第22章 むいしきのおもみ
前回、ジャミルに散々抱かれた後、ベッドでぐったりした私に彼は言った。
「ここは男子校だし、アーヤは、俺みたいに嫉妬しないんだろうな」
「嫉妬してるわよ?カリム君に」
冗談はよせ、と軽くはたかれた。
「アーヤ、……。何読んでんだ?」
ちょっと待って、という暇も無く、ひょいとレオナ先輩に取られた手元の本。何で今日に限って興味を持ってしまったのか。普段なら食べ物ぐらいにしか興味を持たないのに。
レオナは本の表紙を見て眉をしかめた。
「…………………………ただの恋愛小説ですよ」
「この浮かれたタイトルでそれはわかる。そんな趣味だったか?」
探るような目付きに意外そうな声。興味を持たれたらしい。この人に嘘をついてかわすのはリスクがあるので、端的に本当のことを答えることにする。
「一般的な恋愛というものを勉強しようかと」
ジャミルと話していて、彼も私も一般的な恋愛感覚とずれているのかもと思ったのは最近だ。それでもいいと思ったけれど、やっぱり一般常識的なものがあるなら知っておきたいと思って取り寄せたのだ。
「"男子校"で"男装"してるお前が?」
「私、同じぐらいの女の子とそういう話をする機会もないですし、相談相手もいないんです……ほら、今後のためにも、今のうちにってことです」
「最後の一言は付け加えた言い訳にしか聞こえねえな……はん。さてはお前、一丁前にこの学園で恋愛してるってか?面白え、俺が特別に相談に乗ってやるぜ?」
「いやいや。王族様の恋愛は、庶民には参考になりませんので……遠慮します」
「んだよ、相手はジャミル・バイパーか。趣味悪いな」
「っ!?なぜわかったんです!?」
「庶民の恋愛を求めるなら、カリム・アルアジームじゃないだろ」
「ああああああああ」
この人は怠惰なくせに、頭の回転が本当に速い。それでいつから好きなんだよ、と促すこの人から逃れることは、私にはできないのだ。
「何で今日に限ってそんなことに興味持っちゃうんですかね……。いつから、ですか?……ええと」
なぜこの男と恋バナをしなければならないのか!という自分の叫びを抑えて考える。いつからだっけ?元々大好きだったけど、恋って自覚したのは、多分
「恋って言葉を知ったときですかね」
「はあ?」
双方無言がしばらく続いた。
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