第19章 ずっと響いてる
「蛇のいざない」をかけた。
アーヤが俺から遠ざかる。
違う。それを望んだわけじゃない。俺は自分の愚策を激しく呪った。
アーヤが何か言いたそうで、言わないのがずっと気になっていた。
付き合いの長い彼女のことは何でもわかると思っていた。
なのに、最近の彼女がわからない。
レオナ・キングスカラーと関わりがあると聞いて、自分の知らない時間に他の男と会っていると聞いて、どす黒いドロドロとした感情が溢れて止まらなかった。
それを嫉妬と独占欲だと認めたのは最近だ。
同僚が恋人に変わる、というのは思った以上の変化だったらしい。それまでだって、ずっと近い距離にいたのに。
もっと一緒にいたい。
俺が求めるように、アーヤにもっと求めてほしい。
でも、彼女はどう思っているのだろうか。
この止まらない欲求をぶつけたら、重すぎて潰れないか?壊れないか?
不安が頭をもたげて逡巡したときに、それを見た。
その日の午後の飛行術の授業では、またバルガスに成績下位者への指導を指示され、授業時間を過ぎても解放されず、箒で校舎の横を飛んでいた。
「………………は……?」
校舎で、男にキスされて抱きしめられるアーヤが見えた。
声は聞こえない。……抵抗しているようには見えない。
ドロリとしたあの暗い感情が、熱を持って暴発しそうになると同時に
ーーー彼女は俺から離れたいんじゃないか?
背筋に悪寒が走り抜ける。
すぐに同級生に呼ばれ、逃げるように地上へ戻った。
疑心暗鬼だった。
夜、アーヤが話があるという。
なぜ?さっきは来ないと言ったじゃないか。
別れ話でもするつもりか?
そんなの
耐えられない
彼女の赤くなった目を見て、結局のところ自分自身が彼女を突き放した事実に気付いて愕然とした。
最後の侵入者を捕えて、カリムと合流し、学園長から説明を受けて事の全貌を知る。
ふざけるな。アーヤに触れたのも、傷つけたのも、全て全て許さない。
気絶した侵入者たちにトドメを刺そうとしたら2人にしがみつかれて止められた。
カリムが心配して見ているのに気付いていたが、平静を装って授業に取り組んだ。
あんなに昨日拒否していたのに、不安が完全に消えたわけでもないのに、今は、
早くアーヤに会いたい。