第17章 間断なく
カリムは無事だった。よく寝ている。半径20m以内に潜む人もいない。襲撃前に間に合ったか。それともスカラビアに襲撃者は来なかったのか。
先に、ジャミルにこのことを伝えよう。
行き先をカリムの部屋から、手前にあるジャミルの部屋に変更する。同時にユニーク魔法で観る先もジャミルに変更しようとする。だが、
「……観れない」
昨夜のことが過った。ああ、彼は私に観られるのを拒絶しているのか。
胸が締め付けられる。でも、それでも今は従者の仕事が優先だ。
ユニーク魔法で観る先は、カリムの部屋に戻す。そしてジャミルの部屋へ、ノックはせずドアを開け放って入った。
ヒュンッ
鋭いものが空を切る音に、咄嗟に跳んで転がり受け身を取る。まさかと思いながら体勢を整えて部屋を見渡すと、そのまさかだった。
ジャミルと、侵入者3人。先ほど私が避けたのはかまいたちの風の魔法か。
「アーヤ!?」
ジャミルが驚いてこちらを見ていた。私は最低限を端的に伝える。
「カリム君は無事。今も観てる。状況は?」
「っ見たままだ。ついさっき、窓から入られた」
狙いはジャミルか、それともこれは囮で本命はカリムか。だがカリムの部屋へ行こうにも、侵入者の一人がドアの前を陣取っている。何にせよ、この3人をどうにかしなければならない。
先ほど風の魔法を使った男が、再び突っ込んできた。かまいたちを魔法で防御するが、これは囮。
次にナイフが3本飛んでくるので避ける、これも囮。
真後ろに回った男が短刀で切りつける、これが本命だ。
ポケットに入れていたペンを数本まとめて取り出し短刀に合わせる。レオナ先輩にたしなめられたので、マジカルペンは使わない。体を捻り回転していなす。
「こっちは学生だから暗器の持ち込み禁止だってのに!」
体勢を直される前に顎へ膝蹴りを入れた。
気絶したのを一瞥して、ジャミルの方を見ると、そちらも1人倒していた。
最後の一人は?と探そうとした瞬間、右側から殺気を感じる。やばい、右目はユニーク魔法を使っていたから、死角が大きい。体を右に向けると目の前に炎が膨らんで弾けた。
「アーヤっ!!」
ジャミルの声を最後に、意識が飛んだ。