第17章 間断なく
「蛇のいざない」を拒否することはできなかったが、その時のことを薄ぼんやりと、覚えていた。ユニーク魔法で目を使うからか、私の目は魔法耐性が強かったらしい。
でも、本当は覚えていなければ良かった。
どうして、こんなことになったのだろう。私がどうジャミルを傷つけてしまったのか、私はわからない。教えてほしい。言ってほしい。そしたら、謝るから。何とかするから。
離れていかないで。
いつの間にか眠っていたらしい。
コツコツ、コツコツ
今度は窓に何かがぶつかる音で目が覚めた。
今宵はどうして何かに起こされてばかりなのか。寝る直前まで泣いていたから、涙の後が残っているようだ。頬が突っ張られる感じがする。
窓を見ると外は真っ暗で、まだ太陽の気配すらない時間だった。そして、そこには真っ黒なカラスがいた。
嫌な予感がして窓を開ける。
「アーヤくん。緊急事態です」
「!」
カラスから学園長の声がする。伝言の魔法か。
「昨日の男、調べたら学園の生徒ではありませんでした」
昨日、私が学園長に預けてきた男のことだ。
「招かれざる者です。調べたところ、空間転移の魔法具を持っていました。既に使用歴があり、繋げた先は」
先ほどと比にならないぐらい、嫌な予感が背筋を冷たく流れる。
「熱砂の国です」
自分の顔から表情が消えたのがわかった。
「時間が無いので、各寮と校舎を繋ぐ道は一時的に遮断しました。学園内の敵はこちらで処理します」
瞬きを1つ。もう、するべきことはわかっていた。
「スカラビア寮を頼みます。アジームの従者殿」
着替える暇などない。ジャミルとカリムには電話したが繋がらなかった。寝ているのか、それとも既に敵が……。いや、考えるより動け。かぶりを振ってマジカルペンを持って走る。
立ち止まって、目をつぶって、ユニーク魔法を発動させる余裕は無い。負担はかかるが、目を開けたまま、左目はそのままの視界を残し、右目だけにユニーク魔法を使ってカリムを観る。
ユニーク魔法を発動中の目は黒目が水晶のように半透明になるので、普段は他の人に見られないよう目をつぶるのだが、今は緊急事態だし寮生は寝ている。
オッドアイのまま、気にせずカリムの部屋へと向かった。
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