第13章 まどろみのはばたき
毎週1回、決まった曜日の放課後。
持っているのは購買のパンと菓子、教科書とノート。
植物園の決まった一画へとたどり着く。
「こんにちは。レオナ先輩」
「アーヤか」
いつも通りの慣れた動きで、サバナクロー寮長レオナ・キングスカラーの近くに座る。
「今日は購買に美味しそうなのがいっぱいあったんで、沢山持ってきました」
「……それ」
「はい。どうぞ」
初めて会ったのは、1年のウィンターホリデー明けの初日。校舎の外をただ歩いていたら、カサリ、と葉を揺らす音がした。
前方の草むらに誰かいる。
嫌な感じがした。これは殺気だ。立ち止まり、気配を抑える。
警戒レベルを上げた、瞬間。
草むらが小さく光った。
ナイフか?おそらく何かを投げた。
そう思ったときには、従者としての反射で駆け出していた。マジカルペンを握り、投げられたものを物理的に打ち払う。身体の反動を利用してそのまま草むらへ跳ぶと、制服を着た生徒が1人何が起きたかわからず唖然としていた。顎にストレートを入れて倒れたところを上乗りして押さえつけて問う。
「何をしている。誰が狙いだ?」
「……」
「あ、気絶してる?」
顎に綺麗に入り過ぎたか。まあさっきの感じ、この人素人だな。
これからどうするかなと、これからの対応を考えていると、後ろから声がした。
「誰だおまえ」
ハッと振り返ると、背の高い長髪の男が立っていた。マジカルペンを構えている。
「その気絶した野郎は、俺を狙っていたんだ。ホリデー明けは休み中に唆されたバカがたまにいるんだ。毒の付いたナイフを渡して、第二王子に傷を付ければ小遣いがもらえるとかで乗り気になってしまうどうしようもないバカがな。どうせ追及したところで黒幕には辿り着かない。まあ、クロウリーには突き出すがな」
ちゃんと仕事しろよな、あの学園長。ぼやきながら髪をガシガシと掻く彼は、目だけは鋭く隙がない。
「だが、おまえは何者だ?素人の動きじゃねぇな。……それで」
迷う余地無く、確信を持って告げた。
「なぜ女がここにいる」
「っ!!!」
ひどく冷たい汗が流れる。この男のオーラは強くて、ずっと圧力をかけられているようだ。
返答を間違えればこの人にやられてしまう。
息をするのも苦しい圧力に晒されながら、それだけは確信していた。
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