第12章 安心が幻

会話のみ

「ジャミルさん」

「アズールか」

「スカラビア寮のアーヤさんについてお聞きしたいことが」

「！？」

「おや動揺されましたか？」

「いや……」

「ホリデーの事件で、僕らがあなたにナイスショーットされた後」

「……」

「寮まで泳いで戻ってくるとき、途中から誘導してくださったんですよ。彼はジャミルさんの催眠から逃れ、さらに誘導、あとおそらく霧の魔法もかけていました。優秀な方だと思ったのです」

「そうか、それは優秀だな。知らなかった」

「そうなんですよ！優秀なのに今まで全く知らなかった。おかしいと思いませんか？何だか、全ての教科でオール5を取っていた誰かさんを思い出しましたよ。彼も、何か隠している人なのでは？」

「何を言いたいのか知らないが……あいつはいつも口数が少ない。おとなしいタイプなんだろう」

「そうきましたか。(そう簡単に尻尾は出しませんか。)でもジャミルさん、アーヤさんが気になるのにはまだ理由があります。彼とカリムさんは親しげだったんですよ」

「同学年の寮生だからな」

「もちろんカリムさんが分け隔てなく人と接する方だというのはわかります。ですが、去り際に頬を優しく撫でたんですよ。距離が近すぎませんか？」

「……(カリムぅぅぅぅぅぅぅぅ！！！) ……カリムならそれぐらいするだろう。頬が汚れていたんじゃないか？まあ、あいつもアズールに要らぬ詮索で付きまとわれては大変だろう。副寮長としておまえに捕まらないよう、手助けしてやるかな」

「……(チッ) まあ、そう言わずに。ゴホンッ。カリムさんも『寮生だから』と言ってましたしね。少し興味があるだけですよ」









「ジャミルが私に突然話しかけるようになったのって、そういう理由もあったのね」

「そうだ、もうアズールはアーヤのことを気にしていた。それなら、俺がいた方がかわせると思ったんだ。ところで」

「なあに？」

「これからも表向き学友の距離でアーヤと接するつもりだから、聞いておきたい。アーヤが女だと知っている生徒はいるのか？」

「実は」

「ああ」

「1人だけ。口止めはしてある」

「そうか。1人か、良かった。それは誰なんだ？」

「……レオナ・キングスカラー」

「はああああああぁぁぁ！？」

この後しこたま追及された。