第94章 抗うもの
「さっき会ったのは俺の父親だ。お前らには親は死んでいないって言ってたけど、本当は二人とも生きてる。
……黙ってて、ごめん」
サボの告白にエースとルフィは顔を見合わせ、同時にサボの方へ向く。
「「__で?」」
「お前らが言えって言ったんだろ!!」
まったく興味がないとばかりの物言いにさすがのサボも切れる。
あれだけ詰め寄られて告白したのにその反応だったら誰だってそうなるだろう。
「まァ、貴族だってなんだってサボはサボなんだし、謝ってくれたならいいよ!」
な、エース。とルフィが隣へ投げ掛ける。エースもまた許すかと思えば、彼はコトによっちゃおれはショックだ、と重苦しく吐き出した。
「貴族の家に生まれて__なんで、わざわざゴミ山に」
「………」
エースの独り言のような問いにサボは沈黙する。
「__あいつらが好きなのは地位と財産を守っていく“誰か”で、俺じゃない」
数秒の沈黙の後ぽつりと零れた言葉に胸が痛んだ。
果たして十歳の子どもにこう思わせてしまう生活とは、一体どのようなものだったのか。
本当の親には恵まれなくても温かな縁に囲まれ育った水琴には想像することは出来ても決して分かち合うことは出来ない。
安易に慰めの言葉など掛けられない、そんな重たい言葉だった。
「お前らには悪いけど……俺は、親がいても一人だった」
そこにいるのにいないというのは、どんなにつらいだろう。
自分を見てもらえないのは、どんなに苦しいだろう。
何をしても駄目なのだと、__そう、諦めてしまうことがどんなに悔しかったことだろう。