第90章 船長勝負
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「じゃあルールを確認するよ。主を見つけるまでは三人一緒に行動すること。見つけた後は早い者勝ち。誰かが戦っている間は手出し無用。
私のストップが入ったら問答無用で逃げること!いい?」
「分かったから早く行こうぜ!」
「わくわくすんなー!」
「二人とも、俺があっという間に倒しても文句言うなよ!」
腹も膨らみ心身ともに活力で満ちた三人は勝負の開始を今か今かと待っている。
そんな三人に本当に大丈夫だろうかとやや不安になりながら、水琴は主を見つけるために風を飛ばす。
普段よく出没する森の奥を中心に探せば、件の主がゆっくりと移動しているのを見つけた。
「見つけたよ。それじゃあ出発!」
「「「おーー!!」」」
水琴の先導で主の元へと慎重に向かう。
やがて前方に巨体が見えてきた。
あまり近づきすぎれば気付かれてしまう。水琴たちは離れた茂みに身を潜める。
「おれ!おれから行く!」
元気良く手を挙げたのはルフィだ。早い者勝ちなので別に宣言する必要はないのだが、きらきらとした瞳でやる気に満ち溢れ挙手をしたルフィにエースとサボは顔を見合わせる。
「まぁ、俺は別に構わねぇけど」
「ルフィにいきなり倒せるとも思えないしな」
「なんだよ二人とも!見てろよォ!」
兄二人の言い分に憤るルフィだが、ふんふんとやる気満々で茂みから飛び出していく。
「行くぞォ主!”ゴムゴムの~~ピストル”!!」
細い腕をぐるぐると回すと伸ばした腕を勢いをつけ主へ向かって突き出す。
少し前まではうまく前へ飛ばすことなどできなかったのに、エースとサボとの特訓の成果だろうか。へろへろっとした弾丸ではあるがルフィの拳は主の方へと確かに飛んでいった。
しかしやはりそこは子どもの細腕。なんとか主にぶつかったものの、その拳はぽよんと情けない音を立てて弾かれてしまった。
ぎろりと鋭い視線がルフィへと向けられる。
「げぇっ!!」
気付かれてしまったルフィは慌てて逃げる。
その背に主の鋭い一振りが迫った。
ルフィが立っていた少し横の地面を爪が抉る。
勢いで吹き飛んだルフィはころころと転がり水琴たちがいる場所とは別の方向の茂みへと突っ込んでいった。