第87章 消えない絆
日が落ち、代わりに空を月明かりが照らし始める。
だんだんと夜に向かっていくコルボ山の中腹にそっと佇む掘っ立て小屋の前で、わいわいと賑わう人だかりがあった。
「水琴、これはこうでいいのか?」
「マグラ、ありがとう。ドグラ、そっちは準備いい?」
「いつでも出来るニー」
山賊たち総出で組み立てているのは竹で出来た小さなウォータースライダー。
そう、流しそうめん台である。
今宵は七月七日。
年に一度の星合の日。
せっかくだからと水琴は七夕の文化を皆に教え、流しそうめんをすることにしたのだ。
見たこともない装置にルフィは目をキラキラさせて辺りをウロチョロとし、エースとサボもまた初めてのイベントに沸き立つ気持ちを抑えきれないでいた。
「よし、それじゃあ始めます!」
皆にお椀と箸を配り、水琴は一番高い箇所からそうめんを流し入れる。
つなぎ目に引っ掛かることもなく、細い白糸はするすると竹を滑っていった。
「うわっ、もう来た!」
「意外と難しいニー」
「エース!先に全部取るなよ、全然流れてこないだろー!」
「ルフィ、こっちからなら取れるぞ。こっち来いよ」
「たくさんあるからゆっくり食べてね。ダダンも取ってる?」
「食べてるよ。だけどもう少し肴も欲しいもんだね」
「はいはい。酒のアテは後でちゃんと出すから」
思いのほか盛り上がる様子に企画してよかったと水琴は頬を緩める。
ひとしきり流しそうめんを楽しむと、あとは各々で用意しておいたおかずや料理を好き勝手につまみ始めた。
水琴もまた用意していたベンチに座り残ったそうめんを啜る。