第86章 家族の在り方
「でも驚いたわ。あなたみたいな若い女性もいるなんて」
山賊だって聞いていたから、と続ければ女性はふふと笑う。
「私の方こそ驚きましたよ。まさか山賊に会いに来る女性がいるなんて」
「そうかしら」
「まったくだわい。わざわざ山賊の根城に行く奴があるか」
「あら。村長だってルフィのこと心配してたでしょ」
それにガープがルフィを預けたのだから、悪い人たちなわけがない。
そう告げれば女性は一瞬目を見開くと、嬉しそうに微笑んだ。
「水琴」
「え?」
「私の名前、水琴って言います」
よろしく、マキノさん。
差し出される手に手を重ねる。
「マキノでいいわ。歳も近いでしょ?」
「そうかな。マキノって歳いくつ?」
「今年で十七」
「じゃあ年下だね。それなのに酒場を切り盛りしてるなんてすごいなぁ」
「そんなことないわよ」
あっという間に仲良くなった二人のおしゃべりは、ダダン一家へたどり着くまで続いた。
***
マキノの手料理はダダン一家に大好評だった。
口に合うかと心配していたが、皆の食べっぷりにすべてが杞憂だったことに安堵する。
次々と料理を食卓に並べながら、嬉しそうに料理に齧り付くルフィを見てマキノは微笑んだ。
あっという間に空となった大量の皿を水琴と洗いながら、マキノは良かったと呟く。
「山賊のところで一人生活するって聞いて、最初はすごく心配してたんだけど」
「ルフィ、山賊嫌いだもんね」
「ちょっと色々あってね。__だけど、すごく楽しそうで安心したわ」
嫌だと喚きながらガープに引っ張られ山の中に消えていくルフィをはらはらと見送り数か月。
一体どうしているだろうか。山賊のみんなとは仲良くやれているか。
落ち着かない気持ちで過ごしていた日々も今日ようやく終わりを告げ、マキノは肩の荷が下りたような心持だった。