第86章 家族の在り方
夏の日差しが強くなってきた今日この頃。
汗をぬぐいながら、水琴は大きなカゴを背負い森の中を歩き回っていた。
サボとルフィがやってきてからダダン一家の食費はかかる一方だ。自力で調達できるものは調達し、少しでも節約しなければならない。
エースたちに魚でも釣ってきてもらおうかなと考えていると山道の方から人の声が聞こえた。
どうやら若い女性と老年の男性のようだ。
何か困りごとでもあったのだろうかと水琴は木々の間から山道へと出た。
「あの、どうかしましたか?」
「え?」
水琴の声に顔を上げた女性はまさか人がいると思っていなかったのか目を丸くする。
そんな女性を見て、水琴もまた目を見開いた。
「マキノさん?」
「私のことを知ってるの?」
「あ、そのルフィから聞いたことがあって!」
「あら、あなたダダンさんのところの人なのね」
突然名を呼ばれたマキノはルフィの名に納得したように頷く。
危ない。不審者になるところだった。
フーシャ村で若くして酒場を切り盛りしているマキノはルフィの姉代わりのような存在だ。
ガープの目を盗んでルフィに度々会いに来ていたらしい描写があったことを思い出す。
今日もそれで会いに来たのだろうか。
マキノと村長の背後にある台車を見て水琴はあれと気が付く。
「壊れちゃったんですか?」
「そうなの。車輪が取れちゃって」
「だから積みすぎだと言ったろうが」
「だって、お世話になってるんだからこれくらいはご馳走したいと思って」
傾いた台車の上には大量の食材が積んである。
これだけの量を持って山道を登るのはたとえ台車があっても大変だったことだろう。
どうしようと頬に手を当てるマキノに水琴は任せろと胸を張る。
「大丈夫、すぐに直りますよ」
「あなたが直してくれるの?」
「私じゃちょっと難しいけど、得意な子たちがいるから」
手をかざせばふわりと風が舞う。
少し風を巡らせれば、彼らはすぐに見つかった。
「きっと喜びます」
だから、ちょっとだけ待っててくださいね。
驚く二人を前に、水琴はにっこりと微笑んだ。