第80章 それぞれの青い鳥
「この話の青い鳥がヒントなら、つまり元の場所に何かあるってことか?」
サボが話を基にそう推測を立てる。
兄妹が夢の世界に旅立った自室に青い鳥はいた。
つまり、エースとサボが宝探しを始めた地点に宝はあるということになる。
「戻ってみっか」
大木を出発して小一時間経つ。
もし水琴がなにか仕込むつもりなら、十分な時間だろう。
グレイターミナルを出て再び大木へ向かう。
予想通り雨は止み、明るい空には虹がかかり始めていた。
そういや、虹の麓って見たことねェな。
そんなもの存在するのか、学の無いエースには分からないが。
存在しないからこそ、その麓に宝が眠るなんて伝説が生まれたのかもしれない。
木々が晴れる。大木のてっぺんが見えてくる。
奇しくも虹は大木の背後に悠々とかかっていた。
「あ。おーい二人とも!おかえり」
虹の先端が埋まる地で、水琴が大きく手を振り笑っている。
水滴が太陽の光を弾きキラキラと光るように、楽しそうに笑う姿にエースは一瞬見とれてしまった。
「その様子だと気付いた?”青い鳥”」
「やっぱりあれってこういう意味だったのか。思い出せてよかったよ」
「ヒント出した時点で気付かれちゃったらどうしようかと思ったけど、上手く忘れててくれてよかった」
準備できてるよ、と示す水琴の手の先には簡素なテーブルとよく分からない器具、そして巨大な氷。
「これなんだ?」
「上質な氷が手に入ったから、かき氷しようと思って」
「かき氷??」
「知らない?削った氷にシロップとか果物とか乗っけて食べるの。美味しいよ」
手本を示すように目の前で水琴が器を取る。
器具を使い細かく削れた氷は小さな山となり、シロップで色鮮やかに染まった。