第80章 それぞれの青い鳥
__幼い兄妹の話なんだけどね。二人は”幸せの青い鳥”を探しに夢の世界を旅するの。
水琴の話はそんな文句から始まった。
魔法使いの孫を助けるために色々な国を旅する二人。
それぞれの国で青い鳥を見つけることは出来るのだが、国から連れ出そうとすると別の色の鳥へ変わってしまう。
母親の声で目が覚める二人は、自室の鳥籠の中に青い羽根を見つける。そんな話。
「幸せは遠いところじゃなくて、なんでもない身近なところにあるんだよって話。似たようなので”虹の麓には宝物が眠る”って言い伝えもあったりするんだけど」
話し終えた水琴は幸せの有り様について語る。
「物語の二人は夢の世界を旅したから初めて鳥籠の中の青い羽根に気付くの。虹の麓も同じようなものかな。遠くから見れば分かるけど、虹の麓にいる人は自分がそこにいるなんて分からない。幸せって、感じる人がどんな経験をしてきたかで変わってくるものなんじゃないのかな」
遠い遠い、ここでは無いどこかへ行くのが幸せである人もいれば、慣れた土地に骨を埋めることを幸せと思う人もいるだろう。
今はそうだと気付いていなくても、いつか色褪せたそれが”青い鳥”になる日が来るかもしれない。
「だから。どんな日々にも、きっと意味はあるんだよ」
そう言った水琴は、一体何を想ってその言葉を口にしたのだろう。
彼女自身の青い鳥を想ってか、まだ見ぬ虹の麓を想ってか。