第77章 修行!
「能力者相手に闇雲に突っ込んでも勝つのは難しいよ。大事なのは、能力の”本質”を見極めること」
「能力の本質?」
「そう。例えば私なら”身体が風になる”ことが能力の本質で、風を生んだり操ったりするのは付随した能力ってこと」
風になれるのならば、覇気を使用しない限り物理攻撃は効かないとすぐに分かる。
無駄に攻撃して体力を消耗することなく、別の手を考えることが出来る。
「相手が見せる少ない手札から、それがどんな能力か、その能力を持っているならどんな風に立ち回るのかを常に考えること。相手の戦闘スタイルが読めるようになれば、相手するのも楽になるはずだよ」
まぁ全部マルコの受け売りなんだけどね、と水琴は心中で付け加える。
あれは懐かしい、スランプを脱出して少し経った頃のこと。
これから能力者としてこの海を生きるならこれくらいは肝に銘じておけと対能力者講座を開いてくれたことがあった。
結局は水琴の場合逃げられるなら逃げて助けを呼ぶのが一番いいというオチがついた訳だが、そこは別に言わなくてもいいだろう。
水琴の話を真剣に聞いていたエースはスタイルだな!と意味が分かっているのか微妙に分からない声を上げ、立ち上がった。
「もう一回だ、もう一回!」
「はいはい」
あっという間に決着の着いてしまった一回戦に全く挫けた様子のないエースの瞳に決して揺らがない闘志を見つけ、水琴は苦笑しつつも再び砂時計をひっくり返した。