第76章 海賊
「ぐっ!!」
壁に打ち付けられ、エースは思わず声を漏らす。
衝撃で緩んだ手から鉄パイプがこぼれ落ち、からんと音を立てて地面に転がった。
「おいおい。ガキが海賊に盾突くんじゃねーよ」
「ブルージャムがいねェ隙に暴れてやろうと思ったのに、とんだ邪魔が入りやがって」
「まァいいじゃねェか。おかげで良い小遣いが手に入ったんだ」
地面に崩れ落ちるエースを、海賊数人が武器を片手ににやにやと見下ろす。
「うるせェ……それはおれのだ。勝手にさわんな……!」
いつか独り立ちする時の為に、と少しずつ貯めていたお宝の入った袋へエースは手を伸ばす。
しかしその手は簡単に払いのけられてしまった。
量が増えてきたため場所を移し換えようと手に持って移動していたのが間違いだった、とエースは顔を歪める。
「ガキが偉そうな口叩いてんじゃねェよ。これで勘弁してやるって言ってんだ。命が惜しいならさっさと消えなガキ」
「それとも死にてェのか?」
ぎらり、と刃がエースを映す。
その刃は冷たく輝き、その気になればすぐにでもエースの命を奪うことができるだろう。
突きつけられる死の気配に、それでもエースは怯まない。
怯む要素など、彼にはないのだ。
「__おれは逃げねェ。その宝も、てめェらなんかには渡さねェ……」
よろよろと立ち上がり、鉄パイプを構える。