第75章 山賊見習いと縮まる距離
「じゃあ例えば、エースがロジャーの子どもで、世界では受け入れられないとしても。
__私は、絶対エースの味方で、エースを守るよ」
「……なんで、そんな風に言えんだよ」
水琴の言葉にエースが低く呟く。
「おれが海賊嫌いだって知って。あんだけきつく当たられて、なんでそんな奴守ろうとすんだよ」
普通恨むだろ、と続けられた言葉に水琴は柔らかく微笑む。
「恨むなんて、そんなこと出来るわけないじゃん」
そりゃあ、きつい言葉を投げかけられれば傷つくし、避けられればショックだし、撥ね退けられる手は痛むけど。
でも、まるで手負いの獣のような目で世界に敵意を抱き、自分を守ろうとするエースを恨むなんて出来るわけない。
「__怪我して、すごく心配した」
「………」
「大事にならなくて、良かった」
「………」
「私はエースが無事で、嬉しいよ」
「………っ」
小さくその肩が震える。
「エースが海賊を嫌いで、弱い私のことを嫌いでも。
__私は、エースが好きだよ」
段々と、大きくなる震えと押し殺される泣き声に気付かない振りをして。
水琴はただじっと、エースを抱きしめ続けた。