第71章 世界を照らす一筋の光
「やぁ。よく来たね」
無事に辿り着いたベイの船の甲板で、水琴とベイは久しぶりの邂逅を果たす。
「この前は心配かけてごめんね。それと、今日はお招きありがとう」
「迷い悩むのは若者の特権さ、気にすんな。
__だいぶいい顔をするようになったじゃないか」
ベイの意味ありげな視線に、海賊としての意味だけではないことを察し水琴は顔を赤くする。
「言ったろ?難しく考える必要なんて無いって」
「………うん、そうだね」
もしもあの時ベイから電伝虫がかかってこなければ、きっと二人の関係はもっと拗れていただろう。
本当にベイには感謝してもしきれない。
「今日はゆっくりしていくんだろ?色々話を聞かせておくれ」
さぁ宴だよ野郎ども!とのベイの掛け声にクルーたちが湧き立つ。
その日は日が落ちても人の声が絶えることは無かった。
まだ薄暗く、人の気配のない甲板に水琴はそっと足を踏み入れる。
熱を逃がさぬように羽織ったカーディガンの前をしっかりと合わせ、水琴は星がちらつく水平線を見つめた。
その裾野はぼんやりと白く光りつつあり、夜が開け始めていることを窺わせる。
「早いな」
背後から声がかかり振り向いた。
声の主は生欠伸を噛み殺しながらゆっくりと水琴に近付いてくる。
「エースこそ。昨日だいぶ飲んでたのに大丈夫?」
「そこまで強いのは飲んでねェよ」
自然と二人、水平線を臨むように並ぶ。
すぐ傍の温もりに胸が暖かくなるのを感じた。
「……日が昇るな」
エースの言葉通り、水平線が僅かに白く盛り上がる。
いつか一人で見た時よりも、それはずっと眩い光を放っているように見えた。
「エース」
「うん?」
「好きだよ」
「…………おう」
「あ、もしかして照れた?」
「うるせ。………水琴」
「ん?」
「愛してる」
「…………………」
「照れてる?」
「ばか」
日が登り、太陽が新たに始まる世界を照らし出す。
私の世界も、きっと更に輝きを増していくのだろう。
だって、これからは私だけの太陽がいつも共に在るのだから。