第71章 世界を照らす一筋の光
「………」
エースの両手が水琴の肩を抱き、優しく引き離す。
生まれた距離に寂しさを覚える間もなく、エースの頭が肩口に長い溜息と共に落とされた。
「………今回は、遣いのこともあるから精一杯抑えてたっつーのに」
お前ってやつはいつもいつも、とぼやく声はいつもよりだいぶ小さい。
もしかして余計な事をしてしまっただろうかと不安に思っていると、急に身体が浮き上がった。
エースにあっという間に横抱きにされ、向かう先はベッド。
「………?」
すぐに押し倒されるかと思いきや、エースは水琴をベッドの端に下ろし自身もその隣に座った。
重みでベッドがぎしりと沈み込む。
倒れこまないように身体を支える手に、そっとエースの手が触れた。
「__本当に、いいんだな」
そう簡単に止まれねぇぞ、と念を押すエースにこくりと頷く。
指を絡め手を繋ぐ。もう片方の手が水琴の耳元を滑り頭へと回された。
再び重なる唇にそういえば口付け自体も久しぶりだな、とふと思う。
しかしそんな考え事が出来たのもそこまでだった。
エースの舌が水琴の唇を優しくつつく。
それに応えるようにそっと口を開けば、途端に舌を絡め取られ吸いつかれた。
「ん………っ」
甘噛みされ甘い吐息が漏れる。更に深くと求められ、水琴は耐えきれずどさりと背後へ倒れ込んだ。
明かりを遮るようにエースが水琴に覆い被さる。
すぐ真上から覗き込むその瞳に今まで見た事のない雄の気配を感じ、水琴は自身もまた熱に溺れ始めていることを感じ取った。
「__怖いか」
上から水琴を見下ろしながら、エースがそっと囁く。
きっと、水琴が今少しでも怖いと言えば、彼は止めてくれるだろうという確信があった。
だからこそ、水琴は微笑みエースを見上げる。
「__ううん。エースとなら、怖くないよ」
そう。エースが一緒なら。
何だって、どこだって、怖いものなどないのだ。
のしかかる、愛しい熱と重みに。
水琴はそっと身を委ねた。