第71章 世界を照らす一筋の光
「「………」」
受け取った鍵の番号は一つ。
ツインの部屋を前に、水琴とエースは黙り込んだ。
「……お前、部屋取る時二部屋ってちゃんと伝えたか?」
伝えてない。
ようやく宿が見つかった安堵から、すっかり失念していた。
「ご、ごめん!今からもう一部屋ないか聞いてくるよ」
「いや、あの混み具合じゃ無理だろ。桜の影響で他もいっぱいだろうし……」
エースは溜息を吐き踵を返す。
「お前ここ使えよ」
「え?で、でもエースはどうするの?」
「船で休む。一晩くらいは別にどうってことねェよ」
「ダメだよ!いくらエースでも風邪引いたらどうするの?」
出て行こうとするエースのコートを慌てて引く。
夏島ならまだしも、春島の冬でそれはいくら炎人間といえど自殺行為だろう。
それにこれは私のミスだ。その被害をエースに被らせる訳にはいかない。
「だったら私が船で寝るから、エースここ使って」
「それこそ出来るか!」
「じゃあ__……一緒に、使えばいいでしょ」
目を背けながらなんとかそれだけ伝える。
空気が止まるのが分かった。
「__お前、意味分かって言ってるか」
「わ、分かってるし」
疑わしそうなエースの視線に目を伏せる。
あれだけ悩んでいたというのに、結局自分から言い出してしまった羞恥心から水琴は顔を上げられないでいた。