第71章 世界を照らす一筋の光
「それじゃあ……シルフィード、ってどうかな」
またの名をシルフという、元の世界で四大精霊のひとつを冠する名。
風を司る精霊の名は、この船にぴったりの気がした。
「シルフィードか。いい名じゃねぇか」
「うん。これからよろしくね」
そっと撫でれば応えるように風で帆が靡く。
「グララララ……こりゃあ良いもんをもらったじゃねェか」
「親父さん!」
甲板から声がし見上げれば白ひげが水琴を見下ろしていた。
近くには何人か隊長たちの姿も見える。
臨時の隊長会議があると言っていたが、もう終わったのだろうか。
「ちょうどいい。試運転がてらお前それでエースと遣いに行ってこい」
「え?」
急な話に水琴は鼻白む。
遣いと言えばエースがよく傘下の船までストライカーで出掛けているが、なかなかに重要な役割だと認識していた。
それを私のようなひよっこが担っていいのだろうか?
とりあえず上がって来いという言葉に船をウィリーに託し水琴は甲板へと戻る。
「親父さん、遣いってどういうこと?」
「ベイから連絡があってな。どうやら近くまで来てるらしい。水琴はどうしたと煩いから、せっかくだから顔でも出してきやがれ」
そう言えば新世界へ入る直前、ベイから電伝虫で連絡があったのだ。
あれから色々あって連絡をすっかり忘れていた。さぞやきもきさせてしまったことだろう。
ベイには色々と背を押してもらった。可能なら直接顔を合わせたくはある。
「でも、私にそんな大役……」
「今回はお前の顔見せがメインだからそんなに気負うことはねェ。それに、俺は出来ねェやつにやらせるほど無謀じゃねェ」
言外に水琴に対する信頼を感じ、胸が詰まる。
「……親父さんにそこまで言われたら、やらないわけにはいかないよね」
やらせていただきます!と手を高く挙げる。
それでこそ俺の娘だ、と白ひげは豪快に笑った。
「船の支度はウィリーに任せて、お前はエースと準備をして来い」
「はい!……あ」
張り切って返事をして、ふと気付く。
もしかして、これって。
___続きは、また今度ね。
その、今度だったり?