第71章 世界を照らす一筋の光
「水琴、ちょっと来い」
小さな島で休憩をしていた白ひげ海賊団。
思い思いに過ごす中、日がさんさんと照り付ける甲板で一番隊クルーに交じり洗濯の手伝いをしていた水琴は、声を掛けられ顔を上げた。
「ウィリー?珍しいね。私に用なんて」
何かあった?と首を傾げれば強面の整備士・ウィリーはまぁな、と油で汚れた顔をタオルで拭う。
しかし油は伸びて逆に顔に広がり、黒く汚れた。
「顔洗ってきたら」
「今作業終えたばっかだったもんだからよ。せっかくだから早く見せたくてな」
「見せたいって何を?」
「来てのお楽しみだ」
何やら上機嫌の彼になんだろうと疑問に思いながらも水琴はウィリーについて行く。
船の下に位置する彼の根城へやってくれば、そこには布を掛けられた何かが鎮座していた。
ウィリーが張り切ってその布を引き落とす。
現れたのは優美な曲線を描く小型船だった。
大きさはストライカーと同程度。あれよりも帆はやや大きめに作られており、船の左右には転覆を防ぐための浮きが取り付けられている。
小さめのヨットのような形に、これってもしかして。と水琴はウィリーを見る。
「アラバスタでの話を聞いてな。なんかいいもの作れないかと思って。陸も滑れるように改造してるから広い荒野の移動とかにも使えるぞ」
「わざわざ私に作ってくれたの?」
「せっかくの能力。色々使えなきゃ勿体ないだろ」
どうだ、と胸を張るウィリーに抱き着く。
「嬉しい!ありがとう、ウィリー!」
「喜んでもらえりゃあ何よりだ。さっそく試運転といくか?」
「うん!」
ウィリーに手伝ってもらい船を海面まで下ろしに行く。
どこから聞きつけたのか、甲板からは複数のクルーが水琴の新たな相棒を見ようと覗き込んでいた。