第68章 降り積もる” ”
「__い、おい!水琴!」
耳元で鳴る大声に水琴は夢想から覚める。
今度は別の意味で心臓が大きく跳ねた。
「なっ、なに?!」
「……お前、どんだけ飲む気だ」
「え?……あっ」
呆れたエースの言葉に手元を見れば山となるコーヒーの粉。
つい考え事に夢中になってしまっていた水琴はやってしまったと項垂れる。
「今日はコーヒー三昧だな」
「……ごめん」
考え事はほどほどにしよう、と反省する水琴だった。
***
「魚人島は通らない?」
ある日の食卓の席。
食器を片付け終え、今後の航路の話を聞いていた水琴はエースの言葉に耳を疑った。
「でも、新世界には魚人島を通らないといけないんでしょう?どうするの?」
「基本的にはそうだが、抜け道があるんだ。他の海賊と顔を合わせんのも面倒だしな。そっちを通っていく」
抜け道があるなんて初耳だ。聞けば特殊な人間しか知らないルートらしい。
まだスペード海賊団であった頃教えてもらい、そこからエースは新世界へと入ったのだとか。
「ただそこを通るには時間を合わせなくちゃいけなくてな。だから直前の島で休息を取って、時期を合わせて出る」
「分かった。それで、その島まではあとどれくらいなの?」
「もうすぐ見えてくるんじゃねェか」
エースの言葉通り、水平線に島が見えてくる。