第67章 向き合う心
「海賊がいるって言ってたね」
__数日前に海賊が上陸しました。彼らもまだ西の浜にいるかもしれないので、どうかお気をつけください。
「数日前ならもう出たんじゃないか?」
「そうだといいけど」
念の為に確認しておこうかと水琴達は西側の様子を探りに行く。
西から南まで浜は地続きとはなっておらず、間は森が遮っているのでそうそう遭遇することはないだろうが、何かあっても困る。
木々の向こうに船らしき影が見える。
恐らくあれが海賊船だろう。
少し珍しい形だな、と水琴はなんとはなしにそちらの方へ目を向ける。風ではためく海賊旗がこちらを向いた。
描かれた”そのマーク”に水琴は目を丸くする。
「なんだ、どうした?」
「ううん。なんでも」
まさか彼がいるとはなぁ、と水琴は一人心の中だけで驚く。
だが、考えてみれば時期的にもこの辺りにいて不思議ではない。
しばらく様子を見たところ、船周辺から大きく動いている様子は無さそうだ。
これならかち合うこともないだろうと、二人は船へ戻るため森の中を進んでいく。
「しかしどこかで飯は調達しないとな」
「釣りする?」
「久しぶりに肉が食いてェ」
「何か狩れるかさっき聞いとけばよかったね」
鬱蒼とした森が突如途切れた。
もう森を抜けたのかと思ったが、感覚的にまだ半分も歩いていない。
目の前には小屋。
町からは結構離れているが、誰か住んでいるのだろうかとエースと顔を見合わせる。
「どうする?」
「作業小屋かなんかじゃねェの」
「あぁ確かに」
誰かいるなら狩りが出来るのか、また勝手に狩ってもいいのか聞こうと思ったが、作業小屋の方が確率が高いか。
ならば通り過ぎようかと、開けた小屋の前を通っていこうとした時だった。
「__それ以上、その小屋に近づくな」
背後から聞こえた声と殺気に水琴は足を止める。
そして聞こえてきた声に、あぁまさかと振り向いた。
黒と黄に塗り分けられたパーカーに特徴的なキャスケット帽。
右手に下げた長刀。
その服に刻まれているのは、先程も見たとある海賊のマーク。