第66章 とある発明家の話
「オレ点検してるから、水琴達買い出ししてきてよ」
「分かった。何か欲しいものある?」
「サザエの塩焼きと肉!」
了解、と手を上げ水琴とエースは店の立ち並ぶ大通りへと向かう。
「__家族と上手くいってないのかな」
裏道を進む中、水琴はポツリと呟いた。
「そうだとしても、下手におれ達が首を突っ込む訳にもいかないだろ。海賊と船造ってるなんてバレたら、それこそ亀裂が入るぞ」
「そうだよねぇ」
リオが作業場で寝泊まりしているのはこの三日間で分かっている。つまりは家出中という事だろうか。
いつから家出しているのか知らないが、ご両親もさぞ心配していることだろう。
「__アイツが、完全に拒絶してるならともかく」
何が出来ないかと考え込む水琴の横でエースもまた小さく呟く。
「まだ壊れ切ってないなら、おれ達が口を挟むべきじゃねェよ」
「エース……」
「”親がひっくり返る”って言ったろ。”なんて言うか”でも”許さない”でもなくて。つまり、少なくとも家族仲はそこまで悪いわけじゃないんだろ」
もしも嫌悪するような関係なのであれば”ひっくり返る”というような表現は使わないだろう。
それにその場合はエースの提案にも乗ったはずだ。
あまり大きいとは言えないこの島で。あの歳の少年が本気で家族から逃げ出したいと思うなら、島を出る以外に方法は無いのだから。
「よくある思春期の家出とかだろ。アイツもそんなに馬鹿じゃない。自分できちんと対処出来るはずさ」
「そうだよね……」
少なくとも先程のリオからは気まずさはあっても憎悪や嫌悪といった負の感情は伝わってこなかった。
なら心配し過ぎるのもリオに対して失礼だろう。
今水琴達が出来るのは、共に船を完成させた仲間として実験の成功を精一杯祝うことだ。
育ち盛りなリオにせめてたくさん食べてもらおうと、水琴は店を回った。