第63章 絶望の中に見える光
「__ごめんね。急に国を飛び出したりして」
再び戦場へと駆けていく水琴たちの後ろ姿を見送りながらビビは二年前のことをチャカへ謝罪する。
「……だけど、まだ終わりじゃないの…もし、この反乱を止めることができても……
”あいつ”が生きてる限り、この国に平和は来ない……!
わたし……彼らのことが心配で……!」
ここへ辿り着くために置いてきてしまったルフィたちを想う。
__何が何でも生き延びろ。
この先、ここにいるおれ達の中の
”誰がどうなっても”だ
ゾロの言葉が蘇る。
きっと、今も幹部相手に命を懸けて戦ってくれている彼らに胸を痛める。
「……ビビ様」
俯くビビの名をチャカはそっと呼ぶ。
「二年見ない間に貴方はずいぶんいいお顔になられた。
この戦争が終結を見た折には、例の海賊たちと大晩餐会でも開きたいものですね」
「チャカ……」
__メシ食わせろよ。
__クロコダイルぶっ飛ばしたら、死ぬほどメシ食わせろ。
今はここにいない、船長との約束を思う。
「えぇ……そうね」
__そう、すべてが終わったら。
「__困るねェ」
ざわり、と砂混じりの風が吹いた。
さらさらと砂は門の上で人の形をとる。
「物騒なマネしてくれるじゃねェか……ミス・ウェンズデー。
ここは直おれの家になるんだぜ?」
姿を現した七武海・クロコダイルは眼前を見下ろし暗い笑みを浮かべた。
「クハハハ……いいもんだな王宮ってのは。
クソ共を見下すには、良い場所だ」
「クロコダイル!!」
まさか王宮に現れるとは思っていなかったビビは完全に油断していた自分を責めた。
そしてここにクロコダイルがいて、ルフィの姿がないことに一抹の不安を覚える。