第50章 存在の定義
突然走りだしたチョッパーを追いかけナミの部屋へ戻った時にはDr.くれはもチョッパーもいなかった。
ナミに聞けばさっき出ていったという。
「ねぇ、何かあったの?」
横になるナミの傍に座れば心配そうな眼差しを向けられる。
私の方が年上だというのに、なんだか姉が出来たようだと水琴は苦笑する。
「ううん。何もないよ」
「嘘。さっきから変よあんた」
海賊だから何か言われた?とのナミの言葉に首を振る。
言われたことは言われたが、それが根本的な理由ではない。
「ただ、自分の不甲斐無さに落ち込んだだけだから」
気にしないで、と笑えばぐいっと腕を引かれた。
「馬鹿じゃないの」
間近で強い瞳に睨まれる。
「何が気にしないでよ。気にしてほしくないならそんな顔しないの」
こつんと頭を叩かれる。
口調に反してずっと優しい感触に水琴はそっと頭を撫でた。
「無理には聞かないけど。何かあるならちゃんと言いなさいよ。あんたもビビも全部背負いこもうとし過ぎなんだから」
「私は…別に、背負ってなんか」
「背負ってるわよ。大体あんた迷子でしょ?なら私達のことじゃなくて自分の心配しなさいよ」
どうやらDr.くれはからこの城の前に倒れていたことを聞いたらしい。
大方吹雪の中飛んできたんでしょ!と叱られる。
正解は正解だが不可抗力である。
「いーい?白ひげだろうとなんだろうと、この船にいる以上は水琴も仲間なんだから。ちゃんと頼りなさいよ」
「………うん」
他の船の印を刻んでいようと、仲間と言ってくれるナミに心の底から感謝する。
「ありがとう、ナミ」