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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第40章 風の呼ぶ声






 窓を開ける。
 刺すような風が水琴の頬を撫でるが、今朝は装備も万全なためそこまで寒さは感じない。

 林の向こうから僅かに香る潮風に水琴はそっと目を閉じた。


 「風の声……」


 正直全くぴんと来ない。
 声というからには音だろうと耳を澄ませるが聞こえるのは木の揺れる音だけだ。
 やっぱり見聞色など水琴には無理なのではないだろうか。

 「簡単に、諦めちゃダメだよね」

 両頬を打ち挫けそうになる心に喝を入れる。
 よし!と気合いを入れ直し水琴は空に目をやった。


 「風……風かぁ」


 風は巡るもの。
 海を渡り、島々を巡り、空を駆ける。
 見聞色の覇気と相性が良いというのは納得が出来る。
 だが声を聞くというのはどうだろうか。

 風の声。

 そもそも風に意思はある?
 見聞色は生命の心の声を聴く。
 風に命はない。
 じゃあ一体どういうこと?


 コンコンと響くノックの音で水琴は思考の海から抜け出した。
 慌ててドアの内鍵を外せばベイが紙袋を持って入ってくる。

 「手こずっているようだね」
 「なかなか感覚が掴めなくて」
 「まぁ初めてならしょうがないさ。こればっかりは地道にやるしかない」

 餞別、と手渡されたのは焼きたてのパン。

 「根を詰めすぎてもしょうがないよ。お茶にしないかい?」

 ベイの気遣いにありがたくお茶の準備を始める。
 五分も経てば暖かなお茶と美味しそうな菓子パンがテーブルに並べられた。

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