第37章 空と海の境界で風は踊る
「なにごめんって!あれは私だって悪いんだし、エースが謝る必要なんてないじゃん!おまけに無駄に喧嘩売って死ぬ気?!見てるこっちの身にもなってよ!!」
感情のままに吐き出す。先ほどの情景が恐怖と共に甦る。
死んでしまうかと思った。
だって、ここは“ONEPIECE”の漫画とは違う。
同じ人たちがいるけど、ティーチがこの船に乗っていないように、全てが漫画と同じように進むとは限らないのだ。
だから、いつ何時その命が消えてしまうか分からない。
現実なのだ、ここは。
「馬鹿は、どっちよ……」
「__なんで、泣くんだよ……」
頬を流れる涙に恐々と触れてくる。
エースは泣きそうな表情で、水琴を見つめていた。
「なんでだよ……」
「なんで……?」
投げかけられた疑問に、少し落ち着いた水琴はふっと微笑む。
「エースが、大切だからに決まってるでしょ」
この男は、これだけたくさんの愛に囲まれているのに、まだ“生きていていいのか”と思っているのだろうか。
この船に乗って一年にも満たない水琴にさえ分かることだというのに。
ねぇエース。
あなたが態度では気付かないというのなら。
私は言葉で伝えるよ。
きっとクルーのみんなは気恥ずかしくて、なかなか言えるもんじゃないだろうから。
みんなの分まで、私が。
「エースは、船に私が馴染むようにいつも気に掛けてくれたよね。……異世界の民だなんて、よく分からないものだって分かった時も。私は私だって、だから一緒にいたいんだって、言ってくれた。
__すごく、嬉しかったんだよ」
一息吸って、一番伝えたい言葉を言う。
「私は、エースが死んだら、生きていけない」
単純で、だからこそ一番伝わるだろう言葉を。