第33章 海を愛する者
ざばぁ!と腕を上げると水面からはねた水がきらきらと光を反射して宙に舞う。
水面に浮かびながら水琴はそれを楽しげに見やって、再び身体を反転させ海の中へもぐった。
…いつもいつも楽しそうに泳ぐ奴だな、とその様子をぼんやりとエースは眺めていた。
ログポースに導かれやってきたのは新世界の無人島。
小さな島ということもありログがたまるのは三時間らしい。一度休息ということでモビーディック号は錨を下ろしていた。
まずマルコ率いる一番隊が島を偵察し、何も異常がない事を確認すると他の部隊が木材や果物を調達に行く。
ある程度準備が済むと、残りは久しぶりの陸でのんびりと過ごしていた。
エースと水琴もそれぞれ仕事を済ませると、いつものように砂浜の陰で昼寝をしていた。しかし突如水琴ががばりと起き上がったかと思うと、「泳いでくる!」と突然走りだしてしまったのだ。
今日に限ったことではない。水琴がこういった無人島でひと泳ぎするのはお決まりのパターンとなっていた。様子を見ていた他のクルーも「またやってるよ」と笑う。
「お前、もしかしたら前世は人魚だったんじゃねーか?」
「えー、そんな素晴らしい?私の泳ぎ!」
「そういう意味じゃねーよ」
げらげらと笑うクルーに冗談と舌を出して返す水琴。
しかしあながち冗談でもねーよな、とエースは思った。
それくらい、楽しそうに水琴は泳ぐ。
水琴にはどんな世界が見えているのだろう。こういう時は、悪魔の実の呪いが恨めしくなる。