第27章 月の民の心の行方
「___そうか」
祭りから戻り、船長室で水琴は白ひげにすべてを話した。
「お前は、どうするんだ」
「帰ります」
白ひげの問いに静かに答える水琴。
揺るがない瞳に白ひげはただ頷く。
「寂しくなる」
「……私も、寂しいです」
「湿っぽい別れは好きじゃねェ。そうと決まったら明日は宴だ。ゆっくり休んでおけ」
「……はい」
「水琴」
船長室を去ろうとする水琴を白ひげが呼び止める。
「どんな道を行こうと、お前なら大丈夫だ。
なんたって、俺の娘だからな」
「……っ」
「達者に暮らせよ」
自室に戻り、そのままずるずると座り込む。
堪えていた涙がついに溢れた。
声が漏れないよう、押し殺しただただ涙する。
__今だけ。今だけだから。
宴が始まれば、きっと笑顔でみんなにお別れを言えるから。
___今だけ。
一人こぼす涙は、枯れ果てることがなかった。