第21章 記憶の中の赤
「水琴何食べる?」
「んー、このおすすめランチにしようかな。ハルタはー?」
「俺こっちのボリュームランチ」
「あ、すんませーん。ハンバーグとポテトサラダとフライランチ、玉ねぎのポタージュにスタミナチキンステーキ、あと」
「いっぺんに頼むんじゃねェよいエース!」
賑わう食堂でひと際目立つ一団が騒ぐのに慣れているのか、きびきびと動くウエイトレスが大きく返事をして走っていく。
どうやらこの店はこのあたりでは評判の店らしい。海賊よりも一般の人の方が多い状況に珍し気に周囲を見渡す水琴にどうした?と隣のエースは声を掛けた。
「なんか、こういう普通のお店でご飯食べるの久しぶりな気がして落ち着かなくて…」
「最近寄る島はどこも物騒だったからなァ」
「水琴ちゃんもすっかり染まってきたな」
揶揄うつもりで言ったサッチの言葉にそうでしょ?と胸を張る水琴がなんだかおかしくて訂正もせず頭をぐりぐりと撫でる。
「そういえばこの島は貴金属の細工で有名らしいぜ。水琴ちゃんもせっかくだからアクセサリーとか買ってけば?」
「そうなんだ?でも私あまりアクセサリーつけないしなぁ…」
「そういや買わねェな」
「動くとき邪魔になりそうで。もともとつける習慣ないし」
「へー。じゃあこれは?」
横からハルタの指でそっと掬い上げられたのは細い鎖。
二重に重なるそれの先には赤と青が煌めいていた。
「これは貰い物だもん」
「青いのはエースだろ?やるねーこの!」
「うっせェサッチ。燃やすぞ」
「じゃあこっちの赤いのは?」
「__これは、お守り」
掌に乗せれば光を反射しより鮮やかに光る。
見るといつも思い出す記憶の断片を思い出し水琴はそっと微笑む。