第2章 始まり
「…たぶん、エースさんが引っ張り上げてくれなかったら。私は向こうの世界で溺れ死んでました。
…だから、お二人に感謝する理由はあっても、責める理由なんてありませんよ」
ありがとうございます、と頭を下げればエースが息を呑む気配を感じる。
「いや…おれは……」
「それに!あそこから帰れなかったからと言って、帰る方法がないって決まったわけじゃないですからね!」
どうにかなりますよ!と明るく言えば二人は顔を見合わせる。
「なんか…原因になったおれらが言うことじゃないけど…」
「水琴ちゃんってほんとポジティブだね…」
「人間、開き直しが肝心ですよサッチさん」
チッチッチ、と指を振ればようやく二人の表情が緩まる。
「エース隊長!サッチ隊長!準備大丈夫か?」
と、突然ドアが開き、クルーの一人が顔を出した。それにおう!と返しエースが再び私の方を向く。
「水琴、今からお前を親父に会わせる」
「……え?」
親父って、あの白ひげ?
「あぁ、親父ってのはこの船の船長な」
「こうなったのも俺らのせいだからな。水琴ちゃんが帰る方法が見つかるまでうちに置いてもらえるよう頼んだってわけよ」
「もう許可はもらってるから、そんなかたくならなくて大丈夫だ!一応顔出しはしといたほうがいいと思ってな」
……マジですか?
いや、置いてもらえるのはありがたいんですけど!
こんなとんとん拍子に話が進んでしまっていいわけ?
こっちこっち、とエースに言われるがままに向かった先には大きな扉。
ちなみにサッチは部屋を出た所で別れた。なんでも用があるとかで…
「親父ー!入るぜ!」
がちゃりとエースがドアを開ける。
まだ心の準備が出来てないのに!