第105章 芸術の島
「おや、フランじゃないかい。こんな遅くにどうしたんだい」
「お客様をお連れしました。今日この町に着いたそうです」
フランの言葉に女主人はおやまあ!と声を上げカウンター席の向こう側から出てきた。
「宿泊客なんていつぶりだろうね。部屋はたくさん開いてるから好きに使っておくれよ」
トウドウとダグが代表して部屋を取る。二人が鍵を受け取るのを見届けたフランは明日の予定は決まっているのでしょうか、と水琴たちに尋ねた。
「もしよければ、観光のお手伝いができればと思ったのですが」
「いいんですか?」
「もちろん。私としても、まだ話したいことがありますから」
微笑みを向けられリリィは何かを言い掛け止める。本当なら今すぐにでも確認したいのだろう。だが、日暮れは迫っている。これ以上引き留めればフランに迷惑が掛かってしまう。
「どうするエース」
「断る理由はねェだろ。ありがてェ話だ」
デュースが最終確認というようにエースへと話を振ればエースは一も二もなく頷く。この島の事情をよく知らない水琴たちにとってフランの提案は渡りに船だ。
リリィの件も合わされば、ここで断る道理は無かった。